420Fleche日本橋 チームSUCC(静岡大学サイクリング部)
眠い目こすって午前5時。
新宿の街は、早朝だというのに賑やかで、人の足音が響き渡り、交わる。
自分の周りだけ重力が3倍くらいあるのではないか、というくらい身体が重い。
その重い身体を振りながら、ふと口が開いた。
これは24時間に渡る、4人の自転車旅の物語。
目次
フレッシュとは
まずフレッシュとは何か、というところから始めていく。
フレッシュとは、チームで走行するブルベのことであり、フランス語で「矢」を意味する。
日本では3台以上5台以下の自転車で出発し、24時間以内に360km以上を走行しなければならない。ゴールできた台数が3台未満だと、そのチームは失格となる。
また、ルートは各々好きなようにひけるが、ゴールは皆同じになる(同じフレッシュに参戦した場合)。
そしてこれがフレッシュの特殊なところなのだが、残り2時間で必ず25km進まなければならない。
早過ぎても遅過ぎてもダメなのだ。
今回のメンバー
今回は、静岡大学サイクリング部(以下SUCC)のOB、現役生で構成されたメンバーであり、静岡大学2つのキャンパス(浜松、静岡)を結び、キャンプで走ったコースをてんこ盛りにし、日本橋まで向かうルートになっている。
いわば「思い出ラン」なのだ。
しかし、事前に行く予定であったフレッシュのメンバー2人が行けなくなり、ピンチヒッターとして僕が参加することに。
ほんまに僕でいいんか?????
メンバー紹介
リーダーGUTTIさん
このSUCCフレッシュを企画、ルート等々細かいことを考えてくださったチームリーダー。SUCCのOB。
大阪→東京530kmを24時間以内に走りきる、いわゆる「キャノンボール」達成者。
今回僕に足りないライトや反射ベストを貸してくださった上に、僕の心が折れそうな時に励ましてくださった正に「リーダー」のような方。
定期的にツイートがバズる。
静大3年生たくみくん
現静岡大生。現SUCCメンバー。
過去に京都周りのR1ルートでキャノボに挑み、達成には至らなかったものの完走を果たしている。
普通に伊賀ルートで臨めば達成できる力を持っている。
CXでも目覚ましい結果を残しており、ほんまに同級生か?勝てるところなくないか?という感じになっている。
斜度2%でも速度が落ちないクライマー系オールラウンダー。(本人曰くクライムは早くないらしい)(?)
個人的に今回で距離を縮められればいいな、と思っていた。
ピンチヒッター齋藤氏
僕と同じく、空いた2名を埋めることになったランドヌール。
バストロンボーンと自転車を趣味とされるらしいが、身体つきがゴツすぎて楽器演奏者の身体じゃねえ!となっていた。
僕はギターを弾いているが見ての通りヒョロガリである。
会った時から「この人脚やべえな」というのがわかるくらい筋肉のカットが綺麗だった。
僕と同じく膝に不安アリ。
身体と車体からして完全に平坦屋さん!(僕の独断!)
ピンチヒッター黒糖いろう
私立文系Fランなのに国立静岡大学様の自転車部イベントに参加させていただくことになった。
ちなみに留年しそう。
3年前、クロスバイクでキャノボ初級に挑み、完走するものの膝を痛め、そこから試行錯誤を重ね、5ヶ月前にようやく復帰。
怪我後最長がビワイチ(190km)であり、360km走ることに強い不安を覚える。
怪我なく走りきることが最大の目標。
アニソンDJやオタク同士で組んでいるオナニーバンド活動もしているが、特に語ることはない。
得意な地形は特になく、平坦も山も巡航も何もかも遅い。ただの貧脚。
今回はこの4人で「矢」になり日本橋へ向かうことになる。
ルート
ルートはこちら。
世代を超えたSUCC フレッシュの部 - ルートラボ - LatLongLab
浜松から磐田、そこから北上し森町、南下し御前崎方面へ出てから静岡、さらに北上、富士五湖を通り相模原を通り、日本橋に向かうルートになっている。
静岡に向かうにあたり、R1以外を通るのははじめてなので楽しみでしたが、結論から言うとここはキャノボで使う必要ねえな!と言う感じでしたね。
個人的には森町と富士吉田市がよかったです、富士吉田のお話はまた後ほど。
本編
前日譚
前日、4/19(金)は学校が午後まであり、そこから浜松に向かう形になった。
浜松は僕の最寄駅からちょうど2時間ほどで着く。ちなみに大阪までが3時間ジャストなので、そう考えると近いのか遠いのかようわからん感じではある。
浜松城(その存在をはじめて知った)の横にある三つ星ホテルにリーダーGUTTIさんと同部屋で泊まることになっているので輪行をといて向かうことに。
こちらはナンバープレート、めちゃくちゃブルべぽくなってきたな!
まぁブルベなんですけど。
テンジャン上がりながら準備しているところでトラブル1。
ボトルのキャップがない。
いや、どこで落とすんだよ、どうしたら落とすんだよってゲラゲラ笑ってた。うそ。1mmも表情筋は動かず。
まぁキャノボじゃないし1本でいけるでしょう、明日郵送するか〜なんて考えながらホテルへ向かう。
ホテルの前にあるファミマで弁当を2つ買い、お部屋に向かう。
そう、僕は食べるのが大好きなのだ。カツカレーとそぼろご飯、1200kcal摂取し明日に備える。
ここでトラブル2。
エンド金具がない。
いや、どこで落とすんだよ、どうしたら落とすんだよってゲラゲラ笑ってない、ここまでくると表情筋は歪む。筋膜リリース。
毎回ファストランとかこういうイベント前に何かしらトラブってるよな、となる。
いい加減余裕を持ちましょう!
さらにトラブル3。
サイクルジャージ(上)を忘れる。
いや。ワロタ。お前今日何しに来たんだよ、ハンバーグ食べに来たの?餃子か??鰻か???
ちなみに、上2つは無事輪行バッグの中に埋もれており、サイクルジャージは代わりに速乾Tシャツを借りることでことなきを得た。
みんな、出発1週間前から荷支度しような!
ちなみに、この夜は僕のイビキがクソほどうるさく、夢でうなされていたらしい(GUTTIさん談)
めっちゃ迷惑かけてすみません、次から1人で泊まった方が良さそう。
当日朝
ランドヌールの朝は早い。
ぐっちさんは朝3:30に起床、本日の準備をはじめる。
僕もこの時間に目が覚めた、眠気は残ってるけど言うて大丈夫、割といけるわコレみたいな感じ。
それもそのはず、しっかり前前前日くらいから寝ておいたので。
ロングの必勝法は寝だめ、みたいなことをキャノボ警察おじさんが言ってた!
ぐっちさんいわく「いつものブルベより出発時間が遅いから助かるなぁ」
いつもどんだけ早いんだよ、俺一生ブルベできる気がしねえよ、とほほ。
ホテルで身支度を済ませ、若干冷える中漕ぎ出して今回のスタート地点となる静大浜松キャンパスへと向かう。
僕の通っている大学の本キャンと似た雰囲気の広々とした感じがいいね。
浜松駅から離れた住宅街にありました、それ以外特に覚えてません、朝は弱いので。
ここで近くのファミマでロースカツ丼とオレンジジュースをモグモグゴクゴク、うーん、おいしい。
鼻水が止まらんくてハナミズキになっているのでティッシュも購入。
ちなみにこのティッシュは途中で落としました。
僕がモグモグゴクゴクしている間に齋藤さんが正門に到着されていた。
こんにちはおはようございますこんばんは。
先述の通りごっつい方、びびった、ひえー競技勢かよみたいな。
たくみくんが遅くなると言うことで先に3人で自己紹介。これから24時間以上共に過ごす仲間なのでね!
お互いのことを少しでも知りたいね!
挨拶を終えると、SUCCのメンバーであるでぶ猫さんが補給をくださった。
彼は本日のフレッシュには参加しないものの、ずっとTwitterに張り付いて応援します!と意気込んで見えた。ついでに僕のツイートもたくさんいいねしてくれないかにゃーて思った。
でぶ猫さんは普通にさわやかな青年なのにアイマスのオタクらしい、オタクかぁ、僕もオタクだよ〜
そんな話をゲラゲラしていたら警備のおじさんに声をかけられる。
おじさん「これからどこ行くの?」
ぐっちさん「東京です」
おじさん「東京!?!?何日で?」
ぐっちさん「1日です」
おじさん「1日ィ!?」
いつものことである。
ただ、怪我で3年もの間ロングライドができていなかったのでこういうやりとりが久々で、どこか懐かしく、なんか涙出てきそうになった。
クロスでキャノボ初級する前に郵便配達のおじさん「うそやろ…?」と言われたことを思い出した。
そんなやりとりを終え、たくみくんが合流。
全員集合!
左からたくみくん、齋藤さん、ぼく、ぐっちさん。
写真を撮り、スタート地点のローソンへ。
ローソンから東京中央郵便局に荷物を郵送。これで1000円で済むんだし大したもんだぜ、へっ!
局留めはDNFした場合も電話一本で自分の家に届けてもらえると言う優れたシステム。
今回、膝の不安が強くDNF濃厚と思っていたためこういうシステムにはとても救われる。
まぁ、あれですよ、何事も保険があった方が気が楽ってこと。
輪行バッグを持って走るといつでもDNFできる〜って気が楽になるのと一緒、でも輪行バッグ持って走ると駅のたびに「え、もう帰っていい?」となるよね。
PC1 原簡易郵便局
浜松はとにかく信号が多かった。そう、浜松市は政令指定都市なのだ。信号が多いのだ。
この「のだ」という語尾、めっちゃけものフレンズのアライさんになりきれるな、なんてことを考えているうちに磐田市に入る。
今回は5kmで先頭交代、だいたい巡航速度は30km/hを維持するくらいで走る走る。
先頭交代する、ふと後ろを振り返る。
全員反射ベスト着用。
「うわぁ、ブルベっぽいなぁ」と呟く僕。
「いや、ブルベなんだけどね」
すかさず突っ込まれる。
このやり取り、このフレッシュ24時間で10回は行った。
途中、信号のたびにぐっちさんが細かいアドバイスをくださる。
「止まる時は絶対ギア軽くしてからにしろ」という細かいアドバイス、する側も大変だったと思いますがとても助かりました、おかげで最後まで余裕で脚が残っていた!
僕は静岡県内を走る時、R1(国道一号線)しか走ったことがなく、というかそれ以外の道を走ってこなかったため、今回は知らない道ばかりでワクワクしている。
森町(もりちょう ではなく もりまち)なんて初めて聞いた!なにこれ雰囲気岐阜県じゃん!
そんなこんなしてるうちに第1写真PC 原簡易郵便局に到着する。
写真PCなのに外観の写真が特にない。
郵便局というかただの駄菓子屋に近い感じ、写真はないけどポケモンのレジャーシートが置いてあった、これ、僕が幼稚園の頃の奴じゃんワロタ。
写真PCなのだが、100円自販機があったため、そこでスポーツドリンクを購入。消費した分を補充。
今回はせっかくボトル二刀スタイルだし、清水まで平坦ばかりなので重くても言うて変わらない。
当たり前のことだが、ロングはエアロだのなんだのよりも快適性が大事、な気がする。たぶん。しらんけど。
森町からはひたすら南下。
同い年メンバーのたくみくんと「やー、これから御前崎は爆風追い風だし、清水までイージーだなーw」と笑いあう。
ただ、ここから笑顔が消えるまでそう時間はかからなかった。
森町から南下、見たことある景色とお城に出会う。
そう、掛川市内R1号に合流。懐かしい、3年ぶりだねこんにちは、こんにちは〜。
補給は事前にアホほどバーを持ってきているので、今更購入するものは特にナシ。
ただレシートが必要なのでコーラを購入、ぐびぐび飲み干す。
今回はとにかく喉が乾く前に飲むことを意識した。
ここからエコパというスタジアムを通り、若干山を登って御前崎方面に合流する形になる。
エコパってなんやねんとなっていたが、前日電話した女子400mインハイ6位の彼女が「とにかくでけースタジアム」と言っていたのを思い出した、それはもうでかすぎてスタジアムに気圧されたランキング堂々1位らしい、すごいね、外観しか見えんかったけど。
PC3 法多山
寺。サイクルラックが置いてある、寺。
ここは写真PCなので、原の時と同じように背景が映るように写真を撮影する。パシャり。
ローカル萌えコンテンツの自販機がある、くんくん、知多の知多娘。と同じ臭いがする。
こういうコンテンツはマジで売り方次第でドル箱になるけど、難しいんだよなぁ、と。
自分がいつか女性声優になった時に、こういうキャラの声を当てる可能性もあるし、その時は全力で演じたいな、と心から思った。
途中休憩 杏林堂薬局
爆風追い風予報が出ていた御前崎市内へ。キたね、ついに爆風!俺の40km/h巡航が火をふくぜ!うおおお!!
ぶぉぉぉ、ぶぉぉぉ!!!これはスプリントの音じゃない、そう、風の音だった。
あれ、おかしいな、追い風予報だったのに、なんで進まないんだ?丘people!?
ケータイを開き、GPS風向き予報サイトをみる。
ガッツリ向かい風やないかいwwwwしかも8m/sとかいう爆風やないかいwwww
ブルベの基本として、まず「心拍をあげてはならない」というものがある。
心拍をあげると後半タレるし、多少急いだところで休憩の5分でチャラになってしまうからだ。
だから心拍はなるべくあげたくない、常に70%を意識、意識しているのに、先頭を引くと勝手に170bpmまで上がってしまう。ひぃ〜、これいつもの競技練と変わらないにょ〜。
そんな時、イヤ〜〜な痛みが足の裏を襲う。
僕は膝痛の他に扁平足(O脚)を患っており、その症状である「足裏の痛み」が出てきたのだ。
まだ70km地点ですけど、これやばくないですか?あと300km残ってますけど!と焦る。
走り続けると、国道沿いにデカい薬局を見つける、そこで齋藤さんと割り勘でテーピングを購入。
齋藤さんも膝に痛みというか違和感が出てきたらしい、危ないよ!
ぐるぐるテーピングを巻きながら、4人でこんな話をする。
「これ、もしかしたら間に合わないんじゃないか…?」
この時点でグロスAve(信号、休憩含めた平均時速)は19km/hを割り、ここからは延々向かい風。
割とジリ貧、というかキツいことが判明。
早々にテーピングを巻いて自転車にまたがる、再スタート!
何度か名前を聞いていて、昔、自転車で東京行く際はここを通って焼津のスーパー銭湯で泊まるか!と言っていただけに一度来たかった場所。
ただ、こんな日に来たくなかったよ。。。
相変わらず8m/sの爆風が行く手を阻む。
先頭を引くぐっちさんとこんな会話をしていたのが印象深い。
ぼく「ぐっちさん、今心拍いくつくらいですか?」
ぐっちさん「…170bpm(85%)」
ぼく「ははは…(160bpm)(80%)」
笑いが消えた瞬間だった。
向かい風だし、5km引いたところで脚とメンタルを無駄に削るだけという結論に至り、ここからは3kmごとに先頭交代することになった。
すげえ晴れやかな空、見てるこっちが清々しくなりそうだけど、これ、普通に8m/sの向かい風が吹き荒れてるんだよね。
写真PCなので写真を1枚。
この時点でかなりメンタルの方がバキバキに折られていた、結構泣いてた、おんおん。
ここから静岡市内に入るまでの記憶は正直言って何もない、なんかあったっけ?というくらいに。
ただ、そのわずかな記憶の破片を繋ぎ合わせて、記事を綴る。
PC5 御前崎セブン
御前崎のセブンに到着、ここでリーダーから一言。
「休憩は5分ね、補給だけしたらすぐ出るよ!」
キャノンボーラーの「休憩は5分ね」という言葉より重い言葉は「同情するなら金をくれ」くらいだ。
ブルベらしくなってきたじゃねェか…!
ちなみにこの時のぼくは1mmも笑ってません、ずっと「わたしに天使が舞い降りた!」の8話のことを考えてた。
3km走る、交代、3km走る、交代。これを繰り返すうちに自然と風向きが追い風になった。
なにこれ、マジで40km/hじゃん!ひゃっほう!さっきまでの負けムードは一変、最強トレイン軍団と化した。
130bpmで40km/h!?
俺、Jプロツアー参戦待った無しか…????
オファー、待ってます。
御前崎から吉田町へ入る。
吉田町ってなに、初めて聞いた。
走っているうちに、僕はサドルを若干下げることを決意!
決意した理由はケツの筋肉が張ってきたからだ、決意だけに。
そんな冗談言ってられるのは、無事完走し終わって、こうしてブログを書いているからなんだけど、その時の僕はそんな余裕もなかったよ、とほほ。
よくロングを走られる方は事前に1mm、2mmほどサドルを下げる。
この1mmというのはものすごく大きい数字で、絶妙にバランスが変わってしまう。
僕はポジションに敏感な方なので、こういう数ミリ単位でガラッと走りが変わる。
これはサドルを若干下げているアタシとそれを支えるぐっちさん。
焼津から静岡市に入る際、そこそこの峠を越えることになる。
ここで僕は体力が尽き果てかけていた。
違うな、脚はまだまだ動きまくる。ただ、メンタルが潰れそうだった、いや、潰れていた。
ロングライドの真の辛さはコレ、潰れそうなメンタルだ。
途中目にした宗用駅で輪行して帰ろうかと500回は考えた。
自分に言い聞かせた。
5月にはレースもある。
そこで勝つことが上半期の目標だったじゃない。
ここで帰って次の日また練習すればいいじゃない。
急ピッチでロング対応にするべく頑張った1ヶ月、毎週末ロングライド頑張ってきたじゃない。
もう十分よ、帰ってアニメ見て寝ようぜ。
そんな弱気な僕をみて、リーダーであるぐっちさんはこうおっしゃった。
「古典的かもしれんけど、俺はこの4人でゴールしたい。」
数合わせである僕も立派な「SUCCフレッシュの部」のメンバーに数えられていた。
そう、僕もメンバーなのだ。数合わせじゃない、今ここを走ってる僕こそが「SUCCフレッシュの部」のメンバーなんだよ。
そのチームのリーダーの想い、蔑ろにしていいわけがない。
そして忘れるな、レースもそうだけど、このフレッシュの達成も僕の立派な目標だったじゃないか。
「もうちょいやってみますわ、痛み、出たら帰らせてください」
「このあとはうまい飯があるよ、頑張ろうぜ」
背中を叩かれた気がした、強い言葉だった。
すっげぇ弱気だけど、微かに前を向いた脚。
次のPCへと歩みを進める。
PC6 静岡大学静岡キャンパス
静岡大静岡キャンパスは丘の上に建っており、そこそこ登る。これ、ママチャリ一般人にはしんどすぎでは?
得てしてクライマー育成施設と化しているわけであります。
ここも写真PC、写真を撮り、次の場所へと向かう。
そして、ちょうどお昼ご飯の時間帯になってきた。
先の40km/h巡航が効いており、昼飯を食べる時間くらいなら確保できることがわかった。
なに食べる?さわやか?いきステ?という話をしているうちに、こんな店の名前が挙がった。
「五味八珍という中華料理屋さん、静岡にしかないチェーンなんだけど、これ食べたら通ぶれるよね?」
三度の飯より通ぶることが好き。僕は迷わずそこにいきたい!と絶叫した。
静岡市内の信号をくぐり抜け、五味八珍に到着。
この間、僕は渡辺サイクルさんの方でシマノカスタムインソールを購入。
足裏の痛みが割と限界に達してきて、アーチを作ることが可能なインソールを買う必要が出てきたのだ。
そもそもの話、シューズに初めから入っている薄っぺらなインソールは、もう100均レベルのもので、これは買った人が各自でインソールを用意すること前提で入っているという。
アーチもクソもない。
僕のように脚に癖を持っている人はなおのこと、こういったインソールが必要なのだ。
カスタムインソールの効果もあってか、いい感じにアーチを作ることができ、痛みは減った。
提案してくださったぐっちさん、ちょうど良いサイズが残っていた渡辺サイクルさん、全てのタイミングがぴったりだった。
その後急いで五味八珍に向かい、飯を平らげる。
チャーハンとつけ麺が美味しいお店だった。
餃子も美味しいらしい、静岡は餃子も名産だからね、僕が幼い頃はウナギのイメージだったんだけど。
PC7 清水ファミマ
ここ、清水から延々と登りが続く。
富士山の麓までの最後の休憩であるため、補給は必須だ。
これが、俺の補給の答えだ。
ガムを噛みながら走ると眠気なくなるよ〜とブルベを走られている大学の先輩がおっしゃっていたのを思い出した、僕は無限にフィリックスガムを噛む。
ちなみにクジは外れだったので、セカンドガムとしてカフェインガムを購入。
支度を済ませる。
そして気づくと見慣れた景色。
ここで走り続けることを選択した場合、それはもう「ゴールまで走る」という選択肢以外なくなることを意味する。
今回、膝に不安があったのは僕と齋藤さん。
齋藤さんは、これ以外にもブルベを走っており、僕より圧倒的に経験値がある。
おそらく痛みが出てもうまく付き合えるだろう。
ただ僕はどうだろう、3年前のクロスバイクキャノボ初級が最後の350km超ロングライド。
また痛みが出たらどうしよう、リタイアできない、本当に死んでしまうかもしれない。
ただここで壁を超えないこと以外、先へ進む方法はない。
ぐっちさんが問う。
「興津です、ここが最後の離脱ポイントです、先へ進みますか?」
僕と齋藤さんは気づいたら「進みます」と口を開いていた。
そうだよ、ここまできたんだ、あと200km、走ろう。
たくみくんも「200kmなんて無心で回せば着くよ」、と言う。
いや、それは違うよ。
君、人外の沼に片足突っ込んでるな?
ここから延々に始まる60km以上の登り、名峰富士を横目に重いペダルに想いを乗せ、漕ぎ出した。
PC8 ファミマ富士宮朝霧店
「なんで負けたか、明日まで考えといてください」
死にそうな顔をし、コーラを飲む僕に心のケイスケホンダがそう問いかけてくる。
清水からここまでの40kmの道のりを思い返してみた。
登り、ひたすらに、登り。
延々と5-10%の斜度が続く感じ。たまにくる4%が平坦のように感じる、バグじゃん?
途中「ここ、人住んでるの?(失礼。僕の住んでる岐阜も変わらない)」みたいな場所を通ったり、登ったり、登ったり登った。
暗さと登りしかない、景色変わらない、映えないという理由から清水からここまで一切撮影をしていないことに気づいた。
登りも同じように心拍140bpmで回す。
登りは徹底的にサボるに限る。
登りで頑張ったところで変わるグロスなんてたかだか0.5km/hもない、こんなのコンビニ休憩ですぐ溶ける。
それなら、これくらいの喋りながら登れる強度で登って、話しながら走る方がずっといい。
そんなことを考えながら4人で話しながら登る。
色々と話したが、覚えているのは
「動画工房が作るアニメ、IQ3にして観れるし神じゃない?」
「動画工房が作るアニメ、流石に社会貢献しすぎだろ」
「わたしに天使が舞い降りた!、流石に神アニメすぎた」
「ぐっちさんのお嫁さんの作るご飯はうまい」
ここら辺だろう。
ここだけくり抜くとマジで和気藹々としてオタクのオフ会みたいな感じ、まぁ実際そうなんけど!
個人的にこの無限登り区間でみんなで話したおかげで絆が深まったというか、皆さんの知らないことを知れた気がした。
たくみくんとは「今期のアニメ、なに見てる?」みたいな話をされてそこでオススメされた「ひとりぼっちの〇〇生活」は今期の楽しみの1つになった、たくみくんありがとう!
ただ、ここに来て寒さと、200km以上のロングをしてこなかったダメージが襲ってくる。
350km超のロングライドに対応しきれないのだ。
そう、経験値不足が今の僕を苦しめている。
200km走ったと言ってもレース強度で走るビワイチのみ、これはブルベの走りではない、完全にエンデューロ練だ。
そうこうしているうちにPCのローソンに到着。 コンビニで10分ほどだべりながらご飯を食べて、次のPCへ向かう。
ここから300m登るらしい、まだ登るんかい!
再度、登る。
PC9 大石公園
富士五湖、スーパー暗いな。
やばい、暗さしかない、その割に車が走るから怖い、ブーブ🚗
うそ、暗くて何も見えないし何も現れない。
日中だったら綺麗なのかな、と思う。
とりあえず脳内で想像、これが富士五湖か!すげえ!西湖、サイコー!と絶叫し下る。
さながら富士急ハイランドである。
この辺りはアップダウンがひどく、あれ、下ってる?と思って踏んだら普通に平地、なんてことがありまくり。
おかげで、先程の登りでがっつり失ったグロスみるみる回復。
そしてホテル、キャンプ場で人や灯を見つけるたびに若干感動する。
うわぁ!人だ!灯だ!
文明覚えたての中世ヨーロッパ人みたいな感じがする。
PC9の大石公園に着く。マジで真っ暗。
早いものでもう山梨県、ここから下り基調の山梨県を楽しみたいなと思うばかりだった。
PC10 ローソン河口湖
湖沿いを滑走すること2時間、富士河口湖のローソンに到着。チェックポイントである。
ここでも感動したことがあるんだ、そう、人がいる。
人が、いるんだ。
人を感じながらトイレを済ませ、補給を購入。
ここからはガチで眠くなる恐れありまくりなので先ほど清水で買ったカフェインガムをチームメンバーに配る。
そしてしばらく談笑。
下ったら何食べたい?とかそう言った類の話をする。
僕はマックのポテトが食べたいなあ、あの塩っ気がたまんないのよ。そういう話をするとメンバーが皆同調、だよね、マックのポテト食べたいよね!となっていた。
下ったら絶対マックのポテト食べような2019。
の、前に若干また登り、頂上に着く頃には時計の針もぴったり頂上で重なるだろう。
残り僅かな登り道、気を引き締めていこう。
PC11 セブンイレブン相模原津久井
人ってどんな時にどんなことを考えるのだろう。
自転車に乗っているときはどうだろう、自転車のことで頭がいっぱいになるのだろうか。
少なくとも、僕は道志みちを下る際、世話やき上手の仙狐さん」の2話のことを考えていた。
_____富士吉田市に入る。富士吉田市といえば、僕が大好きなバンドであるところの「フジファブリック」が誕生した土地、それはもう僕にとっては聖地なのだ。(マジで余談)
そんな富士吉田、国道沿いはかなり店があり、カラオケまで存在した!カラオケあるなんて思わんかった!(失礼)
と、いうくらいにはこの6,70kmは何とも遭遇しなかったから感動してる、富士吉田、流石に都会すぎるね。
そして6時間以上ぶりに駅も見る。なんか光ってるな〜、ホタルイカ?と思ったら富士急ハイランドだったりした。
すげえ、行ったことないし行きたい。
そこからは淡々と下る。下る、下る。
ダウンヒルは得意ではない、というかはじめてのダウンヒルで曲がり損ねて右ひじを骨折した過去があり、割とトラウマが強い。
今でもションベン垂れ流しながら下っている。
ましてや夜、ダウンヒル、怖すぎね?となっていたが、今回は4人の前灯2つ、尾灯2つ、ヘルメットに前後1つずつという「これでもか」というほどの明るさがある。全く怖くない。
下りは常に110bpm、回復走じゃん!
無限に下ること1時間以上、気づいたらそこは神奈川県相模原市だった
PCのセブンに入る。残り60km地点で残り時間は6時間、スーパーイージーモードだ。
フレッシュは先にもあげた通り、2時間地点で25km残しておかなくてはならない。
早すぎてもルール違反なのだ。
と、いうわけで貯金を豪勢に使っていくことにした。
もうここまでくると勝ちムードがチーム内に漂う。見ての通りこの笑顔。
「御前崎辛かったよね」「わた天はみゃー姉が一番かわいいよね」「黒糖いろうくんのアカウント面白いよね」といった話をした。
うそ、御前崎以外ぼくの捏造。
ゲラゲラ笑ってると近くのバイク乗りの方々が話しかけてくる。
バイク乗り「どこまで行くんですか?」
ぼくたち「東京です!」
バイク乗り「東京!?ちなみにどこから来たの?」
ぼくたち「静岡です!」
こういう絡み、マジで元気でるから好きだよ。
しばらく談笑、お互いの無事帰宅を祈り手を振る。
相模原市は政令指定都市なだけあり、やはり信号が多すぎる。グロスは17kmとかそんなもんだと思う。
中心部はタワーだのなんだのビッくらポン!栄えてる!
まぁそんなことは置いておいて先へ進む、ついに東京都町田市に入る。
PC12 町田セブン
相模原のセブンから1時間後、僕らは町田のセブンにいた。
今回、セブンかローソンしか停まっていない気がする、まぁぼくもセブンが一番好きなコンビニだしすごくありがたい。
ここまでくると、特に買うものもない。補給も事足りてる。
そうだ、ご褒美にはチョコレートだ!
まだ終わってもいない勝負に勝った気マンマン、これ、フラグね?
もう東京か〜、早かったな〜なんて談笑。
いつも談笑してるな僕たち、いいチームなのでね。
ここからは甲州街道を沿っていき、調布、府中と進んでいく。
23区外なのに信号が多く、30km/h付近で走ってもグロス20kmに届かない、名古屋の中村区、中区が延々続く感じ。
ただ、それでも割と時間があまってしまう。
残り2時間地点のゴールから25km先にあるセブンの近くのマクドナルドで時間を潰す。
たくみくんと「ポテト割り勘して食べね!?」となりポテトを食べる。
もちろんクーポン使用。
さっきも食べたいって話してたからね!
パクリ。クソほど塩つええ、何これは!疲れてると塩の味が5倍くらい強く感じるね。
2人で分けてモグモグ食べる、腹減ってる、うわしょっぱ、でも腹減ってる、うわしょっぱ!と頭の中で突っ込みながら食べてる黒糖くんがいる、かわいい〜。
メンバーも皆どっかり疲れているのでへたりながらTwitterをみて「他のチームこんな感じじゃん、うわ、なんか途中で温泉入ってるチームもある」と笑いあう。
いや、フレッシュ中に温泉や人権食ってなんだ?と思ったけど僕らも五味八珍食べてた、美味しかった〜!!
マジで静岡のツウぶりするなら五味八珍と夕方の情報番組「イブアイしずおか」ね?
PC13 府中セブン
しばらく時間を潰し、ラストPCのセブンイレブンに寄る。
ここからラスト25km、しっかり噛み締めて走ろうな、と自分の胸を叩く。
うそ、叩くと普通に身体痛いから何もしてなかった。
22時間も動き続けている肺は若干痛む、お疲れ、終わったらゆっくり休んでくれ俺の身体。
最終PCではお金なさすぎ太郎なのでおやつカルパスを購入、たくみくんも同じものを購入して2人で座って食べた。仲良しかよ。
浜松から富士五湖通って俺たちはここまで来たんだな〜って話をするわけでもなく、インターンの話をしてた。
J◯のインターンがどうとかどういう職に就くかとか。
これ、フレッシュで話す内容じゃなくね?なんか一気にたくみくんと仲良くなれた気がした。
(気がしただけかもしれん!)
英気は完全に養われた。
さぁ行かんとす、ナイスプレイス。
4本の矢を届けよう。
脚は軽かった、今ならどこまでだっていける気がする、細胞は狂喜する、いける、踏める、回せる、回る、進む、進むんだ、止まらないんだ。
うそ、めっちゃ疲れててバリ重かった。
でもこういうラストシーンって無敵モード入った方がカッコよくない?
とりあえず、回し続けた!
「新宿〇〇km」
「日本橋〇〇km」
「は?まだそんなにあるの?目の前に日本橋現れろ」
ひたすらにそう思うばかりである。
ラスト手前20kmとか世界で一番長く感じる。
バイトのラスト1時間とか、なんならラスト10分がめっちゃ長く感じて、時計をチラチラ見て「え、まだあるの?」となるのと似ている気がする。
ここの信号峠も5kmでくるくるローテを回す。
みな、自分の持ってる力をすべて出し切るかのような走り。に見えた。
齋藤さんは見るからに平地ばり強芸人のような風格から放たれる圧倒的な引き、超強かった。
ツワモノロングライダースであるたくみくんとぐっちさんの引きも心強い。
宵の明星が見える。あぁ、暗い夜を乗り越えた。
だがまだ切れない集中力、出し切れ出し切る。
眠い目こすって午前5時。
新宿の街は、早朝だというのに賑やかで、人の足音が響き渡り、交わる。
自分の周りだけ重力が3倍くらいあるのではないか、というくらい身体が重い。
その重い身体を引きずりながら、ふと口が開いた。
上智大学から日本橋までは5kmほど、もう勝った、勝ったんだ。
先頭を引いていたぐっちさんがこうおっしゃる。
「いろうくん、最後引っ張りなよ」
嬉しいな、今回のフレッシュ、チーム戦なのにやれ「3年前、キャノボ初級失敗したリベンジ」だの「3年越しの挑戦」だのとにかく過去を引っ張って、自分でもおぞましいほど因縁をこじつけていた。
途中、痛みも出て辛くなって、もう帰って寝たい、やめたいとなった時も「絶対に走りきれる」と励ましてくれたチームメンバー。
もうこれは因縁とかそういう類の話じゃない、これはこの4人の記録であり思い出なんだ。
そのゴール、先頭を走らせてもらえるのはこの上なくありがたいなぁ。
見慣れた駅だ、ついにきたんだ、東京(トンキン)に!
そして無事ゴール。
24時間に渡る旅が終わった!!!!
お疲れ様でした!!!!
感想
ロングライドってこんなにしんどかったっけ、というようなライドだった。
150kmあたりでの「え、まだ200kmあるのですか?」という精神的ダメージと24時間起き続けなければならないという行為、これらがマジでしんどかった。
メンバーの皆さんがツワモノだったため、最後まで空気が悪くなることなく終われた気はするけど、普通これ喧嘩して雰囲気悪くなるよな〜と。
自分1人じゃ達成できなかったし、ありえないほど多くのことを学ぶばせていただけたいい機会だった!
そして、これを当たり前のように達成してるランドヌールたちはマジですごいな、とも思った。
先から何度も言っているが、僕は怪我からの復帰で「また痛みが出るのではないか」という不安と常に戦っていた。
それは走っている最中もだ。
その不安と向き合えたのは、ほかの3人が僕が辛い時に声をかけ、励まし続けてくれたからだろうと本当に思った。
とりあえす当分の間はレースの方に出るけれど、絶対キャノボも達成したいし、この日味わったものはキャノボで必ず生きる、そうおもった。
ビフォーとアフター、1日活動するという人はげっそりしちゃうことがわかった。
マジでまたこのメンバーで走ってみたいなぁ、なんて考えながら帰りの電車で爆睡してたら岐阜まで着いてた。
完